せかいのみんな、ぼくを好き
おそらく彼はそう思っている。
いや、まちがいなく、そう思っている。
私の病院に付き添ってもらったときのこと、
人気病院のため、待ち時間が二時間にも及んだ。
(善意ある方が順番を譲ってくれたりした。ありがとうありがとうと、いっぱい感じていっぱい伝えた。)
その間彼は、この上なくご機嫌で、みんなに、愛嬌を振りまいていた。
あちらが彼に気付くまで、けっして視線を外さず、じっと、見つめる。
相手が視線に気づかなかったり、
気づいても、乾いた反応だったりすると、
とても、とてもふしぎな顔をする。
「笑ってくれないのはどうして?」というように。
だからまた、しつこく、見つめ続ける。
相手が根負けして、ようやく目が合うと、
「あなたと見つめ合うために生まれてきたのです」というような笑顔をこぼす。
嬉しすぎて両腕をぶるんぶるん振り回すので、
抱いている私はかなり被害者である。
彼はきっと、せかいのみんな、ぼくを好きだと思っている。
それに彼もまた、せかいのみんなを、好きなのだろう。